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【トロッコ問題2】功利主義者の答え「5人のためなら迷いなく1人を殺します!」

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前回までの内容はこちら(トロッコ問題において重要な点を説明していますので、こちらを先に読むことをお勧めします。)

 

今回は、正義について語る上で絶対に必要な知識である「功利主義(utilitarianism)」を極力わかりやすく紹介します。

 

一度くらいは日常や漫画で「あいつは功利主義者だ」とか言うフレーズを耳にしたことがある人は多いと思います。。

では、その功利主義者を定義づける「功利主義」とは一体どんな主義なのでしょうか?

 

 

クッキーの配分でわかる功利主義

例えば、ここにクッキーが10枚があるとします。そして現状では、クッキーの配分はこのようになっています。

ー10枚のクッキーの配分ー

リッチ君=6枚 

ミドル君=2枚 

ミドロ君=2枚 

プア君=0枚 

プオ君=0枚 

格差社会ですね。。リッチ君は6枚も持っているのにプア君とプオ君は1枚も食べることができません。

プア君達はクッキーを1枚も食べれないことで、悲しんでいます。しかし、多くクッキーを持っているリッチ君は6枚分の幸せを本当に感じれているのでしょうか?

例えば、お腹が空いている時におにぎりを1つ食べたら幸せになりますが、お腹いっぱいに食べた後で、おにぎりを食べても、絶対、空腹の時に食べたのと同じ美味しさ(幸福)は感じませんよね。(つまりある一定の数を越えるとその物から得れる幸福が減るということ)このような事を経済学用語で限界効用理論と言います。

 

そういう理屈でここでは、クッキー2枚でお腹いっぱいになるとして、3枚目以降のクッキーのポイントは、半分の0.5とします。それでは行きましょう。

 

ー10枚のクッキーの配分と幸福値ー

リッチ君=6枚 +4ポイント(3枚以降は0.5)

ミドル君=2枚 +2ポイント

ミドロ君=2枚 +2ポイント

プア君=0枚 0ポイント

プオ君=0枚 0ポイント

 

幸福の合計=6ポイント

 

これを、余分に持っているリッチ君から4個取り上げて、プア君とプオ君に2枚づつ分けたとしたらどうなるでしょうか。

 

ー新しい10枚のクッキーの配分と幸福値ー

リッチ君=2枚 +2ポイント

ミドル君=2枚 +2ポイント

ミドロ君=2枚 +2ポイント

プア君=2枚 +2ポイント

プオ君=2枚 +2ポイント

 

幸福の合計=10ポイント

 

リッチ君の幸福は減ってしまいましたが、それでも+以上をキープしています。そして、全員が平等にクッキーを食べれることになり、その結果、全体の幸福ポイントの合計値も6から10に上昇しました。

 

これが功利主義です!!

 

このように、功利主義は全体の幸福の最大化を最重要とします。 

 

一部の人の幸せよりも、皆んな(多くの人)の幸せを優先するべきだよね〜という考え。

 

「なるほど〜、金持ちとか一部を優遇せずになるべく多くの人を幸せにしようって考えか〜、それって凄くいいことじゃない?」と思う人は多いでしょう。

 

しかし、先程のように功利主義は全体の幸福の最大化(皆んながクッキーを食べれること)を第一に考えるため、一部特権階級のリッチ君から無理矢理クッキーを取り上げる(いわば権利の侵害であり略奪行為)ということもやってのけます。

 

つまり、嫌がる金持ちからクッキーを取り上げるという行為自体は悪いことだけど、「なるべく多くの人を幸せにする」という結果のためならやむを得ないよね!というように考えます。

 

そのため功利主義は、最大多数の最大幸福結果主義とも呼ばれています。

 

 

功利主義者はレバーを押すし突き落とす

 

さあ、先ほど学んだ論理をトロッコ問題に置き換えるとどうなるでしょう。

殆どの人が察しがつくと思いますが、そうです。

功利主義の考え方では、トロッコ問題のどちらのパターンでも5人を救うために1人を犠牲にすることを選びます。

 

ここでは、人が1人が死ぬことで幸せのポイントがマイナス1000(つまり1000もの悲しみを生んでしまう)になるとしましょう。そして助かった時の幸せがプラス100それで考えてみるとこんな感じです。。

レバーを切り替えない/太った男を落とさない

5人が死ぬ = ー5000ポイント

1人が助かる = +100ポイント 

合計 ー4900ポイント 

 

 レバーを切り替る/太った男を落す

 1人が死ぬ = ー1000ポイント

5人が助かる = +500ポイント 

合計 ー500ポイント

 

悲しみの合計値(被害)が少ないのはどちらでしょうか?言うまでもなく、後者ですよね。

 

このような論理で、功利主義者はどんな状況だとしても5人を救うために1人を犠牲にするべきだと答えます。

 

なるほど、確かに合理的だ。功利主義の考え方のようにレバーを切り替えたり男を押せば、結果として悲しみは最小限に抑えられる。

 

しかし、私たちは人間なので、こう考えてしまうでしょう。

「でも、これで本当に良かったのだろうか?..」

 

「確かに、5人を救うことができ、結果としての悲しみの数は減ったけど、そのために殺人(酷いこと)をしてしまったという事実は変わらない。これで本当に良かったのだろうか?...」

 

...その疑問に答えるのは次回にするとします..!

 

次回は、功利主義とは全く異なる概念。プロセス主義について解説します。(8/25更新予定) 

romanoff.hatenadiary.com

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